好きな曲をピアノで弾きたいと思っても、楽譜が見つからなかったり、見つかっても難しすぎたりすることがありますよね?
曲は知っているのに、自分の指では追いつかない。
そんなとき、演奏したい気持ちと楽譜の難しさの間には、意外と大きな距離があるものなのですが、その距離を縮める方法が少し変わってきそうですよ。
ヤマハが9月11日にβ版を公開した「Piano Sheet Converter」は、音源ファイルを読み込むと、標準的な楽曲なら約3分でピアノ譜を生成してくれるのだそうで、その特徴は、できあがった楽譜を一種類だけ出すのではなく、なんと「入門」「初級」「中級」「上級」の4段階から難易度を選べること。
これまでなら、弾きたい曲に合う楽譜を探し、その中から自分に弾けそうなものを選ぶのが一般的だったのですが、今回のサービスでは、曲を選んだあとに「どのくらいの難しさで弾きたいか」を指定できるという、なんともピアノの練習者には嬉しいニュースが!
「弾けない曲」を、自分のレベルに近づける
このサービスが興味深いのは、AIが耳コピの作業を短縮するというのもそうですが、なんといっても同じ曲から4段階の譜面を作れるというところで、曲の難しさを固定された条件として受け取らなくてもよくなります。
「この曲は難しいから無理」と思ったとき、曲を諦める前に、譜面を変えるという選択肢が生まれるんですから、これはかなり画期的。
もちろん、入門譜を選べば必ず簡単に弾けるようになるというわけではありませんが、これなら練習のモチベーションづけにもなりますよね。
入門譜といえど、実際にどの程度の演奏技術が必要なのか、生成された譜面をどれだけ修正する必要があるのかは、曲や出力結果によって変わるものですが、これ、入門譜が弾けるようになったら、次は「初級」へとアップグレードしていけるわけですから、上達スピードも上がっていきそう。
最初から「原曲に近い一枚の楽譜」を探すのではなく、まずは「自分が弾くための譜面を作る」という考え方が生まれてきますよね。
ヤマハの楽譜AI技術の説明でも、難易度の違いは、和音構成、リズムの細かさ、音域の広さなど、楽譜の構造に関係する要素として扱われているようで、難易度を変えるとは、単に「簡単」というラベルを付けることではなく、演奏するための形そのものを変えることとなりそう。
原曲に忠実な楽譜と、弾くための楽譜
原曲をできるだけ正確に記録したい人にとって、楽譜は音楽の内容を保存するもので、どの音が鳴っているのか?どんなリズムなのか?どのような和音や伴奏なのか?など、原曲との一致が大切になります。
その一方で、好きな曲を自分の手で弾きたい人にとっては、楽譜は演奏するための入り口であり、原曲のすべてをそのまま再現できなくても、メロディーや雰囲気を残しながら、自分の技量で弾ける形になっていることには十分な価値があるでしょうし、練習するための熱量だって大きく変わってくるでしょう。
この二つは、どちらかが正しくて、もう一方が間違っているという関係ではありませんし、求めているものがそもそも違いますよね。
楽譜を探すから、自分用に作るへ
これまで、市販楽譜がない曲を弾きたい場合、耳コピをするか、誰かが作ったアレンジを探す必要がありましたが、それらには難易度の設定はありませんし、基本的には用意されたものから選ぶしかありません。
しかし、音源から複数の難易度の譜面を生成できるようになると、そこに別の流れが加わってきますよね。
まず弾きたい曲を決め、そのあとで自分のレベルや目的に合う譜面を作り、必要なら編集し、演奏しながら調整していく。
Piano Sheet Converterは、生成した楽譜の編集にも対応していて、PDF・MIDI・MusicXMLへの書き出しもできるようになっていて、生成結果をそのまま完成品として受け取るだけでなく、自分の用途に合わせて扱う余地もあるんです!!
こうなってくると、ピアノが弾きたいだけでなく、ちょっとしたアレンジまで行えるようになるのですから、音楽に対する興味がさらに強くなっていきそう。
「この曲は弾けない」と感じたとき、これからは曲の難しさだけでなく、どんな譜面なら自分は弾きたいのかを考えることになっていくという未来。
楽譜は、原曲を記録するものに加え、曲と演奏者の距離を縮めるための翻訳にもなっていくのかもしれませんね。
